時効援用サポートサービスの対応事例

~競売残額の時効について~

こんにちは。
私は、一般の方々に向けて法律関係のトラブルや判例などを紹介したり解説したりする仕事をしています。日常のことやお金に関することは想像している以上に法律で解決できます。逆にいえば、法律を正しく理解していないことで解決できる問題がややこしくなってしまったり、宙ぶらりんになってしまったりすることもあります。

今回紹介するのは、購入したマンションを競売によって手放した際の残債について住宅管理債権回収機構から請求された方の相談事例について紹介します。

今回の相談者の方は、住宅を手放した際の競売によってマンションの代金は相殺してチャラになったと思われていたのですが、実際には住宅ローンの残金が残っていて、支払いが滞納状態になっていました(残額600万円)。

マンションの売却は約8年前の2011年。相談者さんは、インターネットで情報を調べて、民法の時効援用という制度が利用できないかと考えられました。そこで、時効援用手続きのサポートを行っている行政書士事務所に相談の電話をかけてこられたということです。

今回は、結果的には時効援用手続きの要件を満たしていなかったため、時効援用の手続きを取ることができなかったのですが、いったいなぜ時効援用の要件を満たしていなかったのか?

そのあたりの詳細を紹介したいと思います。

時効援用の相談電話(相談者さんのプロフィール)

まずは、相談者さんのプロフィールについて紹介します。

今回の相談者さんは、40代男性です。2008年に結婚して子どもが生まれたことをきっかけに2,600万円で中古マンションを購入されました。ところが、2009年に離婚、2010年に転職をしたことから、相談者さんにとって住宅ローンの支払いが厳しくなってしまい、滞納するようになってしまいました。

その結果、マンションは競売にかけられることになり2011年に売却になりました。相談者さんとしてはこの時点で±0になったと勘違いをされていたのですが、この時のマンションの売値は2,000万円。差額の600万円は、相談者さんの負債として残っていました。

相談者さんのプロフィール
年齢 40代前半
性別 男性
職業

会社員

家族構成

単身(10年前に離婚。子どもの親権は元妻)

相談内容

購入した中古マンションのローン残額。マンションは競売にて売却したものの差額が600万円残っている。住宅債権管理回収機構からの督促で初めて滞納の状態となっていることを自覚。

相談者の要望
相談の
きっかけ

住宅債権管理回収機構(住宅金融公庫)から督促状が届き、600万円の支払いが困難であり、インターネットで情報を調べ時効援用が申請できないかと思い相談した。

では、電話の内容を見ていきましょう。

時効援用の相談内容

あの、住宅債権管理回収機構のマンションの住宅ローンについて時効が援用できるかどうかを尋ねたいんですけど・・・

ありがとうございます。住宅債権管理回収機構に対する時効援用ですね。条件が合致すれば時効の援用はできますが、詳細を確認しないことには何とも言えませんので、詳しく教えていただいてもよろしいでしょうか?

はい。
えーと、以前購入したマンションがあるんですけど、支払いが苦しくなって競売にかけられたんです。それで、無事に売れて私としては相殺されたと思っていたんですけど、どうも残額が残っていたみたいで、この間株式会社住宅債権管理回収機構というところから督促状が届きました。600万円分の残金の支払いが残っている状況です。

そうなんですね。競売にかけられたのはいつのことですか?

2011年の2月です。

2011年2月・・・、8年前ですね。購入時にどこでローンを借りたかによって時効が5年になるか10年になるか変わるんですが、どの住宅ローンを借りられましたか?

はい。住宅金融公庫のフラット35です。

住宅金融公庫住宅ですか。そうすると、非常に残念ですが時効期間が成立するのは10年ですので、今はまだ時効援用の条件を満たしていない状況です。

えっ。私の場合には、時効援用できないんですか?

はい。先ほどお伝えした通り、少し例外はありますが時効援用が成立する期間としては5年と10年の2つの種類があります。簡単にいえば、営利企業が営利目的で貸したお金については5年間、それ以外の場合には10年間が適用されます。住宅金融公庫のフラット35は営利目的とはみなされないので、10年が経過しないと時効援用の申請はできないということになります。

そうなんですね。分かりました。
そうすると私の場合、時効援用をするにはあと2年ほど待たなければならないということですね?

そういうことになりますが、2年間待っている間に裁判を起こされる可能性もあります。
裁判を起こされてしまった場合には、不利な条件で支払いを命じられることもあります。現に、今督促状が届いているという状況ですので、あまり期待しすぎない方が良いかもしれません・・・

正直なところ600万円をまとめて支払うのはムリなんですが、どうしたらいいでしょうか?

電話相談のポイント解説

ここまでで、いったんポイントを整理します。

今回の相談は、時効期間が大きなポイントになっています。
相談者さんは、競売から8年経過しているので時効が成立していると考えましたが、実際には今回の時効期間は10年なのでまだ時効が成立していません。

ポイント1
住宅ローンの時効期間について

住宅ローンの時効期間は5年間の場合と10年間の場合があります。

5年間

主に営利団体による営利目的の借金。
例)銀行のローン、消費者金融からの借金、カードローン、クレジットカードの引き落としの滞納など

10年間

主に営利団体以外からの非営利の借金。
例)住宅金融公庫の住宅ローン、信用金庫が個人に対して貸す借金、奨学金、保証協会など

住宅ローンの場合、銀行からお金を借りた場合には5年、住宅金融公庫住宅や信用金庫からお金を借りた場合には10年と、どこからお金を借りるかによって時効期間が異なる点に注意が必要です。

また、銀行や消費者金融からの5年の時効期間が適用される借金の場合でも、一旦裁判訴訟が起こされた場合は、判決後10年経過しないと時効が成立しません

ポイント2
マンションの競売について

住宅ローンの引き落とし残高が不足すると、ローンを借りている金融機関から督促状が届きます。

そして、滞納3~6か月の頃は、保証会社によって代位弁済がされますが、それでも支払いの滞納が解消されないとマンションが競売にかけられてしまいます。

マンションが競売にかけられてしまうと、売却が決まった時に強制的にマンションを退去させられてしまうことや、相場よりもかなり安い値段でしか売れないことから、非常に大きなデメリットになってしまいます。

競売時の売却額は、住宅ローンの残額と相殺されます。

ポイント3
マンション管理費の滞納について

マンションの場合、マンション管理費の滞納が問題となるケースもあります。

今回の相談者さんの事例では問題視されていませんが、最悪のケースではマンション管理費の未払いによってマンション管理組合からマンションが競売にかけられることもあります。

またマンション売却後に、管理費の未納があるケースでも未払い分については支払い義務が継続します。この場合の時効期間は5年です。もし、今回の相談者さんが住宅ローンの支払いだけではなくマンション管理費も一緒に滞納していた場合は、マンション管理費の部分については時効援用が申請できる可能性があります。

ポイント4
競売の時効中断について

今回のケースで、相談者さんの時効期間は競売が行われた2011年2月を起算点としています。

それは、競売の申立てや配当の時点で時効が中断されるためです。時効の中断とは簡単にいえば時効期間がリセットされることです。借金の時効は原則として、最終の返済日を起算点として期間を計算しますが、競売が申し立てられる競売申立ての時点が時効の起算点になります。

例えば、債権者が債務者に対して裁判訴訟を起こした場合、強制執行をした場合、債務者が債権者に一部支払いを行った場合、返済方法の相談をした場合などが時効中断事由にあたります。

逆にいえば、時効期間は競売申立てや配当の時期から起算されるので、マンションの購入時期や最終の支払いから10年以上が経過していても時効期間を満たすとは限りません

時効援用を申請して失敗しないためには、時効期間の正確な計算が重要です。

時効期間が経過しており、中断事由もないという方は今が最大のチャンスです。早急にお手続きすることをおすすめします。

ポイント5
サービサー(株式会社住宅債権管理回収機構)について

今回の相談者さんのケースでは、株式会社住宅債権管理回収機構というサービサーから代金が請求されています。

相談者さんが住宅ローンを組んだのは住宅金融公庫ですが、滞納分の代金の回収は異なる会社からされているということになります。

株式会社住宅債権管理回収機構は、住宅ローンなどの債権回収を専門に行っている代行業者です。債権回収を専門に行っている業者なので、債務者にとっては厳しいのですが回収漏れにならないように一つひとつの債権を正確に厳しく管理されている傾向があります。

今回の相談者のケースでも時効期間が成立するまで2年を切っているという状況なので、このまま時効が成立するのを期待したくなるところですが、時効が成立してしまう前に裁判訴訟などの手段で時効が中断させられてしまうケースが大半です。

債権がサービサーに移行された場合でも、時効期間などについては元の債権者からそのまま引き継がれます

ポイント6
株式会社住宅債権管理回収機構からの借金の督促について

住宅債権管理回収機構からの督促は、電話や書面(はがき)での督促が基本です。書面は、配達証明で送付されるケースと一般郵便で送付されるケースがあります。

いずれの場合でも裁判上の請求でない限りは法的な効力は持ちません。ですが、無視を続けると職場に電話がかかってきたり、自宅に訪問されたりする可能性もあるので、無視を続けるのは債務者本人にとって大きなデメリットになります。債務の承認にならないようにだけ気を付けつつ、適切な対処を心がけましょう

対応策についての相談

行政書士事務所の業務範囲としては、時効援用の事務的な手続きということになりますが、今回の行政書士事務所では対応可能な範囲内でその後の対応についての相談に応じています。

このまま、住宅債権管理回収機構からの請求に対して無視を続けても、時効期間が成立する可能性は低いんですか?

一概には言えませんが、時効の成立まであと2年あります。その間に、裁判訴訟をされて強制執行をされる可能性は否定できません。

強制執行された場合、どうなりますか?

裁判所を通じて、残金の支払い督促が請求されます。原則は残金を一括で、ということになります。この時、交渉次第で分割に応じてもらえるケースもありますが、交渉に応じてもらえないケースもあります。その支払いができない場合には、財産や給与を差し押さえられてしまう可能性もあります。

財産を差し押さえられる際には、「これだけは譲れません」というようなことはできるんですか?

いえ、財産が差し押さえされるときには抵抗できません。住宅や貴金属、小切手など現金化できるものは、現金化されて返済の一部に充てられてしまう可能性が高いでしょう。

それは・・・、困りますね。せっかく生活が安定してきたところなのに。離婚していて養育費だって払わなければならないから、給与が差し押さえられるのも困るし・・・

取れる対応としては、債務の任意整理もしくは自己破産などがあります。もしまだ、裁判上の督促が届いていないなら、まだもう少し検討する期間はあると思いますので、債権問題に強い弁護士事務所に相談されてみてはいかがでしょうか?

弁護士事務所に相談すれば、そのあたりの対応方法について相談できるんですか?

そうですね。相談者さんの場合には、弁護士事務所がよろしいかと思います。債務の金額が140万円以下の場合には司法書士事務所でも対応できるんですけど、今回は債務額が600万円ということなので。
相談や依頼に費用は掛かってしまいますが、将来の対応も含めてどのような対策が望ましいか専門的な立場からサポートしてもらえると思いますよ。

わかりました。ありがとうございます。

時効援用の失敗と時効援用できない場合の対策に関する解説

時効が成立していないケースでの対応方法については、慎重に検討する必要があります。

時効期間の把握について

今回の相談者さんのように明らかに時効期間が成立していないケースではもちろんですが、時効期間が成立しているかいないかがはっきりしない場合については特に慎重な判断が必要です。例えば以下のケースです。

慎重な判断が必要なケース

  • 自分自身がいつ最後の返済をしたのか覚えていないケース
  • 裁判を起こされていたかどうか、いつ裁判訴訟を起こされたかの記憶があいまいなケース
  • 借金返済の督促があって、返済方法についての相談をしたか否かが明確ではないケース

このようにあいまいな知識に基づいて時効援用を申請したところ、実は時効期間が経過しておらず債権者から時効援用不成立の書類が到着するケースもあります。

時効援用に失敗するデメリット

時効援用に失敗した場合、単に失敗した以上にデメリットが生じる場合があります。

具体的には次のようなデメリットがあります。

失敗した場合のデメリット

  • 時効援用手続きをすることが、債務の存在を認めること=債務の承認になり、時効が中断してしまう可能性があること
  • 時効援用の申請書が到着したことで、債権者が忘れていた債権を思い出し、それまで止まっていた取り立てが再開する場合があること
  • 時効援用にかかる費用が無駄になってしまうこと

また、時効期間が成立していると勘違いして申請をした場合には、なくなると思っていた借金がなくならなかったという精神的なダメージも大きいかもしれませんね。

時効援用に失敗した時にはどうすべき?

時効援用に失敗した時、条件を満たしていない時には、借金を何とか返済していく方法を考えなければなりません。とはいえ、今回の相談者の方のケースのように一括で600万円を簡単に用意できる方はそうそういないと思います。そういった最悪の事態を避けるための方法として、まず考えられるのは債権の任意整理です。

任意整理は、法律の専門的な知識が必要なので弁護士事務所や司法書士事務所(債務額が140万円以下の場合)に相談するとよいでしょう。

任意整理の交渉次第では、分割支払いの相談、支払いの金利部分の減額、元本部分の減額などが認められる場合があります。ただし、あくまで債権者側が応じた場合のみなので、交渉の進め方などによって結果が左右されるケースもあります。また、滞納を繰り返したり、督促を無視したりといった対応を続けると、債権者側の心証が悪くなることもあります。

また、債権者が債権整理に応じてくれないケースや、債権整理をしても現実的に支払いが不可能な場合には、自己破産を含めてその他の対応策についても検討する必要があります。

そういった点を含めて最適な対応を取るためには、法律の専門知識を持った弁護士や司法書士の力を借りるのがベストではないかと思います。

弁護士事務所や司法書士事務所と行政書士事務所の選び方について

弁護士事務所、司法書士事務所、行政書士事務所は、どれも法律の専門家で一般の方々からすると同じように見えるかもしれません。厳密にいえば、それぞれ仕事の担当する範囲が異なるのですが、借金問題の解決について考える際には次のように考えると良いかもしれません。

弁護士事務所

法律に関する問題は債権整理や自己破産も含めてすべて相談できます。また、裁判の出廷や債権者とのやり取りの代行を依頼することもできます。
その代わり、費用の相場は最も高額となることに注意が必要です。時効援用を依頼することも可能ですが、多くの弁護士事務所では着手金の他に成功報酬として別途費用が発生します。

司法書士事務所

借金の額が140万円以下の案件について、弁護士同様の活動が依頼できます。費用相場は弁護士に依頼するケースよりもやや安くなりますが、事務所によって金額が異なります。料金体系は弁護士事務所同様に成功報酬が必要な料金体系を取っている事務所が多いです。

行政書士事務所

時効援用の書類作成郵送手続きについて代行で行うサービスを行っています。依頼内容に基づいて確実に事務手続きを進めてもらえるサービスです。費用相場としてはもっとも安くなります。成功報酬が発生する事務所もありますが、成功・失敗に関わらず一律の料金体系を取っている事務所もあります。

以上のように、ご自身の状況や認識の確実性に応じてどの事務所に依頼するかを検討していただくと良いかもしれません。

また、弁護士事務所や司法書士事務所などでは初回の相談から費用が発生する料金体系を取っているケースも珍しくありません。要点がまとまっていないと、相談時間もあっという間に過ぎてしまうので、最初から相談料金のかかる事務所に相談するのは少し費用がもったいないようにも思えます。

今回の相談者さんは、そこまで意識して行政書士事務所に電話をかけてこられたわけではないかもしれませんが、こちらの行政書士事務所では無料の電話相談に対応している事務所なので、ご自身の状況を把握するためにも最初は無料相談のある行政書士事務所に電話をしてみると視界が開けるかもしれませんね

まとめ

時効援用はいつでも申請できるというわけではありません。

時効期間が経過していること正しく手続きを進めることが大切です。手続きを正しく進める点については、行政書士事務所などに依頼をすることで失敗するリスクをほぼ0にすることができますが、時効期間の正確な認識というのは非常に難しいものです。

特に2019年時点では、時効の種類が5年10年の2種類あり、どこから借金を借りているかによってどちらが適用されるかが異なりますので、一般の方にとってはとても紛らわしいと思います。

今回の相談者さんも、時効の期間のせいで時効の条件を満たせなかったパターンでしたね。

このように、本人が条件を満たしていると思っても、条件が満たせていないケースはあります。こうした時に、行政書士事務所に相談をすると、相談の中で条件に満たせていないことに気が付けることがあります。また、裁判を起こされていた可能性や返済方法の相談をした履歴について冷静に思い出すこともできます。

条件を満たしていない時に時効援用の手続きをすると、債務の承認になってしまったり督促が激化したりしてしまうなどデメリットが生じてしまうこともあるので、そういった点でも相談の電話は大きな役割を果たすと思います。

今回は、残念ながら時効の援用が適用できないケースではありましたが、スタッフさんのアドバイスにより相談者さんも弁護士事務所への相談という次のステップへスムーズに移行することができたとのことです。いわば、無料で借金問題の道案内が受けられたような感じなので、このような形で相談されたことはすごくよかったんじゃないかなと思います。

迷っている方は、こうして一度法律事務所に相談されることをおすすめします。