時効援用サポートサービスの対応事例

~時効になったはずの借金の督促状が届いたら?

こんにちは。
私は、一般の方々に向けて法律関係のトラブルや判例などを紹介したり解説したりする仕事をしています。法律問題といってもあまり身近に感じない方が多いかもしれませんが、正しく法律を把握していなければいざという時に焦ってしまったり混乱してしまったりすることがあります。

例えば、
・時効になって支払う必要がないと思っていた以前の借金の督促状が届いたら・・・?
・時効になっているはずなのになんで請求書が届くの?
・届いた請求書は無視してもいいの?
などの不安や疑問が生じて、どのように対処すればよいのかわからなくなってしまうと思います。

今回紹介する相談事例が、ちょうどそのようなケースです。

相談者さんは借金にも時効が存在するということはご存じだったんですが、時効を成立するためには援用が必要ということを把握されていない状況でした。援用を平たく言えば、意思表示をすることです。

つまり、時効が成立していたにもかかわらず、ずっと意思を表示していなかったためにずっと借金が残り続けるという状況に陥っていました。今回の相談者さんの場合には、行政書士事務所への相談の結果、ご自身の誤解に気づくことができ、時効援用の手続きが無事に完了しました。しかし、一歩間違えば、成立するはずだった時効が成立しなくなることもあります。

同じような状況の方々もいらっしゃるかもしれませんので、今回の相談者の方の相談事例と照らし合わせながらご自身の状況について確認していただけたらと思います。

その他、時効援用の際に誤解しやすいことについてもまとめているので、併せて確認していただけたら幸いです。

時効援用の相談電話(相談者さんのプロフィール)

まずは、相談者さんのプロフィールについて紹介します。

今回の相談者さんは40代女性です。15年ほど前に、今は倒産してしまった武富士という消費者金融の会社から借金をし、10年以上に渡ってその返済ができなくなってしまいました。債権者は倒産した武富士から株式会社日本保証に移行し、さらに借金の回収は日本保証の代理として引田法律事務所が行うことになりましたが、これまで10年以上債権者側からの連絡は一切なかったということです。

そして、相談者さんは借金の督促が来なかった理由は時効が成立しているからだと認識してしまいました。

実際は、相談者さんは時効援用の手続きを取っていなかったので時効は成立しておらず、督促が届かなかったのも偶然だったのですが、その結果誤解が長く続く状況となってしまったそうです。

相談者さんのプロフィール
年齢 40代後半
性別 女性
職業

主婦

家族構成

夫婦と子供二人(小学生2人)

相談内容

独身時代に、好きな洋服やバッグなどを購入するためにお金が不足して消費者金融武富士で何度か借金。
当然返済するつもりで借金をしたが、収集欲がどんどん大きくなり借金は60万円以上に膨らんだ。相談者さんの元々の収支は±0くらいだったので、相談者さんにとって借金額はあまりにも大きくて、結局滞納をしてしまう羽目に。
その後10年以上経過しているが、途中借金の督促はない、という状況。

相談者の要望

時効期間が経過したのに督促状が届くのはなぜか?

相談の
きっかけ

急に株式会社日本保証の代理人である引田法律事務所から突然督促状が届いた。引田法律事務所という名前には見覚えがなかったが、督促状の内容(借金の金額や時期など)から当時の借金の請求書が届いていると認識し、困惑して時効援用のサポートをしている行政書士事務所に相談の電話をした。

では、電話の内容を見ていきましょう。

時効援用の相談内容

もしもし、過去の借金の時効について聞きたいんですけど、借金の期間は5年じゃないんですか?

お問い合わせありがとうございます。
借金の内容にもよりますが、借金の時効期間は5年、ないし10年です。

10年?10年だとしてもとっくに過ぎているはずなんだけど、時効期間は5年じゃないんですか?

少し紛らわしいんですが、営利目的の借金の場合は5年、その他の借金の場合は10年です。例えば、銀行からの借金やキャッシングローンの場合は5年の時効期間が適用されます。

ということは、消費者金融からお金を借りた場合は何年ですか?

消費者金融の場合には5年ですね。

てことは、やっぱり時効になってなきゃおかしいな。昨日、10年以上前に消費者金融で借りた借金の請求書が届いたんです。これって、相手が間違ってるってことですか?代理の引田法律事務所というところから届いたんですけど。

今の段階では、そうとも言い切れません。例えばこの10年くらいの間に借金の相手方から裁判を起こされてしまったといことはありませんか?

ありません。

では、支払い方法について相談をしたとか?

そもそも、相手方とはこの10年間ほど一度も話をしていません。電話がかかってきたこともありませんし、こちらからかけたこともありません。

そうなんですね。では、時効期間が経過した後に時効援用の手続きはされましたか?

え?時効が成立するには手続きが必要なんですか?

はい。
今のお話の内容だと、時効援用の手続きがまだのようですね。

手続きが必要だなんて知らなかったです。手続きは今からでも手続きは間に合いますか?

はい。この10年間1度も相手方と話をしていないことや、裁判を起こされていないということが事実なら、今から時効援用の手続きをすれば問題ないと思います。

そうそう、あと一つ・・・引田弁護士事務所というところにお金を借りた覚えはないんですけど、この事務所は何なんですか?

引田弁護士事務所は、主に借金の回収などを専門に行っている弁護士事務所です。今回、元々武富士の借金ということで、武富士の借金を回収する権利は株式会社日本保証に引き継がれているんですが、引田弁護士事務所は日本保証の代わりにこうして督促状を送ったり、督促の電話を掛けたりする事務所ですね。

引田法律事務所からの連絡も無視するとダメなんですよね?

代理人なので、債権の回収に関しては本人である日本保証と同じ権限を持っています。従って、やみくもに無視をしてしまうと、裁判を起こされてしまったり、強制執行をされたりすることもありますよ。

では、早速時効援用の手続きを申し込みたいんですけど・・・。

かしこまりました。ありがとうございます。
当事務所に時効援用のサポートをご依頼いただく場合は、1社あたり9,800円~ですが、よろしいでしょうか?

はい。分かりました。問題ありません。

ありがとうございます。また、相談者様の身分証と今回の督促状をメールかLINEで送っていただきたいんですが、それも問題ないでしょうか?

わかりました。電話のすぐ後に送ります。

お待ちしております。送っていただいたらすぐにこちらで先生に確認して手続きできるようにしますので。

だいたいどのくらいの日数で手続きが完了するんですか?

こちらでサービスを受けられるか否かを確認して時効援用の書類を作成・郵送するまでの期間はだいたい3営業日くらいです。それを相手方がどのくらいの期間で手続きするかは相手方次第なんですが、だいたい平均すると1か月くらいで完了するケースが多いです。

そうなんですね。手続きが完了した時には、「手続きが終わりました」っていう連絡があるんですか?

それも相手方次第です。時効援用手続きの完了通知がくる場合もありますし、来ない場合もあります。来ない場合には、電話で問い合わせをすれば結果を聞くことができます。また、もし認識の食い違いがあって、例えば裁判が起こされていたり、5年以内に一部の支払いがあったりして時効期間が経過していない場合などには、必ず時効援用不成立の知らせが到着します。

では、ずっと通知が来なかったときには時効が成立したって考えてもいいってことですね?

時効援用は、書類が相手方に到着した時点で効力を発揮するので、要件さえ満たしていれば相手方から返事が来なくても成立はします。相手方が処理をする期間はケースバイケースですが、1~2か月くらい経過した時に時効援用の結果について相手方に問い合わせをしても良いかもしれません。

電話相談のポイント解説

ここまでで、いったんポイントを整理します。

今回の相談の大きなポイントは、借金の場合の時効は期間が経過しても援用(意思表示)をしなければ成立しないということです。

時効期間が経過しても、時効が成立するわけではないの?

刑事事件の時効と違って、民事の場合には時効期間が経過したからといてその時点で借金が帳消しになるわけではありません

一般の方々はドラマやニュースなどで刑事事件の時効について見たり聞いたりする機会の方が多いと思いますので、どうしても混同しやすい部分ですね。

<刑事事件の時効の例>

Aさんがコンビニエンスストアで万引き(窃盗)をした場合
・・・Aさんは窃盗から7年間が経過すると、自動的に時効を迎え刑事処罰される可能性がなくなります(窃盗罪の時効=7年間。刑事事件の時効は罪状によって異なります)。

<民事の借金の例>

Aさんが消費者金融から借金をして、5年以上滞納を続けた場合
・・・Aさんは時効期間(5年以上)経過し、時効援用の意思表示をした時点で法律上の借金返済義務がなくなります(正確には、相手方が時効援用通知書を受け取った時点で成立)。

なぜ借金の場合は意思表示をしないと時効が適用されないの?

刑事事件と異なり、借金の場合には意思表示をしないと時効が適用されないのはなぜでしょうか?

その主な理由は以下の二点だといわれています。

  • 借金の場合には時効が成立することで債権者が損をしてしまうから
  • 中には、時間がかかっても借金を債権者に対して返したいと願う債務者もいるから

これらの理由により、借金の時効を主張する際には必ず債権者に対して意思表示が必要ということになっています。時効援用の意思表示は、内容証明郵便で確実に相手方に送付することが必要です。

また、時効援用をしないことのデメリットとして遅延損害金についても把握しておくことが大切です。

遅延損害金とは支払いが遅れたことによる債権者への賠償金です。支払いが遅れれば遅れるほど遅延損害金は大きくなるので、放置しておくと元々の借金よりも遅延損害金の方が大きくなってしまうことも珍しくありません。時効援用をすれば、遅延損害金や借金の利息は借金と一緒になくなりますが、何らかの手違いなどにより時効援用に失敗した場合、非常に重い額の請求がのしかかる可能性があります。

時効援用の通知方法

時効援用の通知方法は、一般的に内容証明郵便で行います。

厳密にいえば、特に方法の指定はないので普通郵便やメール、FAXなどでも申請は可能です。しかし、内容証明郵便以外の方法では、相手方が確実に受け取ったことの確認が困難です。その点、内容証明郵便の場合には、相手方が書類を受け取ったことが確認できるので、到着が確認できます。

また、書面の内容についても確認が取れるので、内容の食い違いに関しても防ぐことが可能です。

内容証明郵便には行数や1行当たりの文字数などの規定がありますが、行政書士事務所に依頼する際には特に依頼をしなくても内容証明郵便で手配をしてもらうことができるので安心です。

規定などが複雑で面倒なため、失敗を防ぐためにも専門家に正式な手続きを依頼することがおすすめです。

時効期間が経過した後に督促状が届いた時には支払わなければならないの?

時効期間が経過していても、時効援用をするまでは支払い義務は継続しています。従って、督促状や請求書が債権者から到着した時には、支払い義務はあります。時効期間が経過している場合は、この時点ですぐに時効援用をすれば時効を成立させることができます

しかし、もしほんの一部であっても請求された金額を支払ってしまった場合には、時効が中断してしまいます。時効の中断とは「ストップ」ではなく「振出しに戻る」を意味します。

こうした事態を招いてしまわないためにも、時効期間が経過した場合は確実に時効援用手続きを完了させましょう。

時効の中断事由とは

時効中断の事由には大きく分けて以下の3つがあります。

事由①
債務の承認

債務者(つまり借金をした人)が借金の存在を認めることです。

具体的には、請求額の一部を返済すること、返済方法について相手方に相談をすることなどが債務の承認にあたります。「今は給料日前だから少し待ってほしい」というような言葉でも債務の承認にあたりますので、債権者と電話などで話す際には慎重に対応する必要があります。

事由②
請求

「請求」といっても督促状や請求書が自宅に届くのは「請求」にはあたりません。時効中断事由の請求とは、分かりやすくいえば、「借金を返してください」と裁判を起こされることです。

今回の相談のケースでもスタッフさんが相談者さんに「裁判を起こされたりしませんでしたか?」と確認をされていましたね。

請求による時効の中断の注意点は、時効期間が10年になってしまうことです。元々の時効期間が5年だったケースでも、裁判判決から10年経過しないと時効援用ができないことを把握しておきましょう。

事由③
強制執行、差し押さえなど

裁判の結果に基づいた強制執行や差し押さえがされたケースでも時効期間が中断してしまいます。

例えば、債権者に住居を取られてしまったり、給料を差し押さえられたりするケースです。

時効期間が経過して時効援用しようと思った矢先に裁判を起こされてしまったらどうしたらいいの?

ビジネスやスポーツの世界では、ほんの少しのタッチの差で真逆の結果が生じることがあります。では、時効援用をしようと思った矢先に相手方から裁判の通知が届いてしまったらどうすればよいでしょうか?

この場合は、結果的にいえば問題ありません。相手方の訴えによる裁判所からの訴状に対しては、到着後2週間以内であれば異議申立書を送付することができます。この異議申立書に「消滅時効を援用する」という旨を記載し、裁判所に提出をし、さらに時効援用通知書を債権者に送付すればOKです。

ただし、2週間以内に異議申立を送付しなければ裁判が有効となってしまい、時効が中断してしまう可能性があります。さらには、ご自身に不利な内容の返済方法が確定してしまう可能性があります。

時効期間が経過している場合には、早急に対応するよう心がけましょう。

時効期間は5年?それとも10年?

借金の時効期間は、借金の種類によって2種類あります。
一般的な時効は民法で10年と規定されていますが、商人による借金の場合は商法が適用され5年が適用されます。

具体的な事例としては以下の通りです。

5年
  • 消費者金融や銀行の借金
  • クレジットカードでのショッピング
    カードローン
10年
  • 信用金庫や農協での個人の借金
  • 奨学金の返済
  • 住宅金融支援機構の住宅ローン
  • 知人友人など個人間での借金

やや判断が難しい部分もありますが、営利企業による営利のある借金の場合には5年、それ以外のものは10年となります。

民法の改正について

2019年の時点では、時効の期間は上記のように5年もしくは10年に統一されていますが、2020年4月1日からは5年に統一されます。ただしここで注意したいのは、2020年4月1日より前に発生した契約に関しては、従来通りの時効が適用されるということです。

つまり2019年に友人からお金を借りて、後々時効援用をしようとした場合には、現行法通り10年経過してからでないと援用できないということです。

代理人弁護士とは

今回の督促状ですが、引田法律事務所という法律事務所から届いています。

この引田法律事務所とは、債権回収を専門に行っている弁護士事務所で、今回の相談の事例では株式会社日本保証の代わりに債権回収を請け負っています。

代理人と債権者から直接請求される場合との違いですが、債務者から見た場合には特に大きな違いはありません。引田法律事務所が本来の債権者である日本保証に代わって督促の書類を送付してきたり、電話をかけてきたりしてきます。時には、自宅に直接訪問されるケースもあります。

以上のような本来債権者が料金を回収するために行う業務を専属で行っているのが引田法律事務所です。むしろ、引田法律事務所は、専門的にこれらの業務を行っているので、債務者から見れば手ごわい相手に感じるかもしれません。もし時効期間が経過している場合には、これらの債権回収の行為をされる前に早急に時効援用を通知しましょう。

債権者が倒産した場合でも借金は返さなきゃいけないの?

今回の相談者さんは特に気にされていませんでしたが、元々相談者さんが借金をしていた武富士という消費者金融業者は2010年に事実上倒産しました。このような倒産した貸金業者から借金をしていた場合についてですが、結論はお金を借りている会社が倒産した場合でも借金は返さなければなりません

1990年代から2000年代前半には業界最大手の会社だったので、武富士から借金をしていた方も少なくないと思います。

武富士が倒産したのは、利息の過払い金請求が過熱したのが原因といわれています。グレーゾーンという法律の抜け穴を使って消費者金融業者は利益を上げていたのですが、消費者からの返還請求が上がった時に返還しなければならなくなり、全国的に返還請求が過熱したことが経営を圧迫したのです。

武富士は、2010年に会社更生法の適用を申請しています。その後、武富士の債権は、ロプロを経て株式会社日本保証に引き継いでいます。時効期間や裁判訴訟などの中断事由についてもすべて引き継がれるので、元の会社が倒産した場合でも借金の返済義務はなくならないということをしっかり認識しておきましょう。

時効援用の結果

今回の相談者さんの時効援用の結果は、時効援用が成立して督促状も届かなくなりました。

相談者の方も、最初はかなり不安に思われていたようですが、1か月間以上督促状が届かない日が続くとだいぶ期待が大きくなったようです。

電話で確認をする方もいますが、今回の相談者の場合は特に確認はされなかったということです。ただ、督促がストップしてきたことに安心されたようです。

まとめ

今回は時効が成立したと思っていた借金の督促状が突然届いた事例について紹介しました。

このようなケースでは、突然の督促状にパニックになって状況を確認しないまま債権者に電話連絡をしてしまって結果的に債務の承認をしてしまい時効が中断してしまうケースがあります。そうした失敗を防ぐためには、時効援用の大原則を押さえておく必要があります。

時効援用を通知するためには、以下の2点が必要です。

①時効期間が経過していること
②書面によって時効の意思表示を示していること

これをよく覚えておき、突然の請求・督促に備えておきましょう。