2019.07.11更新

時効中断の請求とは?具体的内容と確定判決の効果

一定の期間が経過した借金や未払いの代金は、時効が成立して帳消しにできる可能性があります。

時効を援用する(「時効だから借金を支払いません」という意思表示をすること)際に最も気を付けなければならないことの一つが時効の中断です。時効が中断すると、時効期間は振出しに戻ってしまうため、時効の援用ができません。

そして、債権者からの請求は時効中断事由の一つです。時効が中断してしまうだけではなく、差し押さえなどにつながってしまう可能性もあります。

今回は、時効中断の請求とはどのようなものか、請求をされたらどうなるかについて解説します。状況によっては、請求をされても時効援用できることもありますので、この記事を参考に冷静な対応を心掛けるようにしてください。

時効を中断させる請求とは

借金の時効成立を妨げる効果のある時効中断。

時効の中断には3つの事由があり、請求はそのうちの一つです。請求とはどのようなことを指すのか解説します。

時効援用と時効中断

請求について解説する前に、時効援用と時効中断について確認しておきましょう。

時効援用とは、借金や未払いの代金支払いについて「時効になったので支払いません」という意思表示をして、法律上の支払い義務をなくすことです。時効期間は、最後に支払いをした日から5年もしくは10年です。時効援用手続きが完了すれば、借金や代金の支払いを相手方から請求されなくなります。

時効援用について詳しくはこちらで解説しています。

ただし、期間が経過すれば必ず時効が成立するわけではありません。成立を妨げるのが「時効の中断」です。

「中断」というと一時停止のような印象を受けるかもしれませんが、時効が中断すると時効期間は1日目に戻ってしまうのでニュアンスとしては「リセット」の方が近いです。

時効の中断についてはこちらで解説しています。

時効の中断3つの方法

債権者(借金の貸主など)は、時効期間が成立すると料金の回収ができなくなるため、時効を中断させようとします。そして、その方法は以下の3つです。

時効中断事由

  1. 請求・・・裁判訴訟など
  2. 差し押さえ・仮押さえ・仮処分
  3. 債務の承認・・・貸主に対して分割支払いの相談をする、「返済をちょっと待ってください」とお願いする、一部支払いするなど

※2020年4月1日~の法改正により、仮押さえと仮処分は時効の中断の効果を失います。

これらの事由がなく時効期間が経過して始めて時効が援用できます。といっても、例えば「請求」とは具体的にどんなことが請求になるのかイメージしづらいかもしれません。

請求とは

具体的に、時効を中断させる効果のある請求は以下の通りです。

裁判上の請求
  1. 支払督促の申立て
  2. 訴訟の提起
  3. 民事調停の申立て
  4. 即決和解の申立て
  5. 任意出頭による訴え
  6. 破産手続き参加
  7. 更正手続き参加
  8. 再生手続き参加
裁判外の請求(催告)・・・時効の中断は6か月間のみ(裁判上の請求を起こすことを前提とする)
  1. 内容証明郵便
請求にはならないもの
  1. 請求書
  2. 督促状
  3. 電話での支払いの催促

請求というと、請求書や督促状のことをイメージされると思いますが、請求書や督促状が何通届いても時効を中断させる効果はありません

また、時効の中断に関わる「請求」は必ず裁判が関わります。

ただし、支払い催促の電話がかかってきた時に、「あと3か月待ってください」「利子の分だけでもなんとかなりませんか」などの相談をしてしまうと、債務の承認にあたりますので時効が中断してしまいます。

反対に、時効の中断事由に心当たりがない方は借金を帳消しにできるかもしれません。

裁判で訴えられたときに時効の期間がリセットされてしまうと覚えておけばいいんですね?

その通りです。ただし、時効期間間近に内容証明郵便が届いた時には注意が必要です。次の章では、請求について、一つひとつ具体的に解説します。

請求の具体的な内容と確定判決の効果

裁判といっても日ごろなかなかなじみのないものだと思います。請求の具体的な内容について一つひとつ解説します。
そして、確定判決の効果についても併せて解説します。

裁判上の請求

裁判上の請求の内容については以下の通りです。

支払督促の申立て

債権者が支払督促の申立てをすると、簡易裁判所から支払いの命令「支払督促」が届きます。
さらに支払督促を無視すると、債権者から強制執行で財産を差し押さえられる可能性もあります。

訴訟の提起(少額訴訟含む)

支払を求めて裁判を訴えられることです。勝訴・敗訴に関わらず、訴訟が提起されたら時効は中断します
訴状を無視した場合も時効中断します。もし、訴状が届いた時点で時効期間が経過している場合は、2週間以内に異議を申し立てれば時効援用の手続きを取ることができます。

民事調停の申立て

裁判所の調停委員会のあっせんにより、話し合いによって解決を図る方法です。話し合いの結果は裁判の結果と同じ効力を持ちます。

即決和解の申立て

当事者同士で話し合いをし、裁判官にその内容を確認してもらって書面を作成してもらうことです。

任意出頭による訴え

裁判所に任意に出頭して話し合いをし、和解するケースです。任意なので、出頭に応じて和解できた場合のみ時効が中断します

⑥~⑧
破産・厚生・再生手続き参加

債権者が破産・厚生・再生手続きに参加した場合、連帯保証人に対する時効が中断します

特に多いのは①、②のパターンです。
これらの裁判上の請求を起こされた場合、その時点で時効期間が経過していない限りは時効が中断します。

裁判外の請求

まもなく時効期間が経過する・・・といった時でも内容証明郵便の書類が到着すると時効期間が6か月間延びます

この6か月間の間に裁判を起こされたり、返済方法の相談をしたりすると時効期間が中断します。

裁判上の請求を起こすためには準備のために2~3か月程度かかるのでこのような仕組みがあります。
時効期間が満了する直前に内容証明郵便が到着した場合には、債権者側も裁判の準備を進めている状態です。

確定判決は時効期間が10年に!

確定判決(裁判の判決や裁判上の和解、調停など)が確定すると、時効期間は10年になってしまいます。

元の時効期間よりも長くなってしまうこともありますが、法律上規定されているので裁判上の請求を起こされるデメリットは非常に大きいのが現状です。

裁判上の請求を起こされてしまったら、かなりペナルティが大きいけどどうしたらいいんでしょうか?

異議申し立てをすると同時に、まずは時効期間が経過していないか確認してみましょう。
時効期間が経過していても時効援用前は相手方が裁判を起こしてくることはよくあります。一人で考えずに、弁護士や行政書士などの法律の専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

請求には時効中断の効果があります。

裁判上の請求と裁判外の請求の2種類がありますが、時効中断の効果があるのは裁判上の請求です。裁判上の請求により時効中断になった場合、時効期間が10年になりますので時効援用はかなり厳しくなります。

裁判には手間も費用も掛かることや、裁判を起こしても回収できない場合は結局裁判費用が無駄になってしまうことから、債権者側もむやみに裁判訴訟を起こすようなことはありません。しかし、裁判上の請求をされた時にはかなり立場が厳しくなることは理解しておいた方が良いでしょう。

請求された時点ですでに時効期間が成立している場合には、請求に対する異議申し立てをしたうえで時効援用手続きを取ることができます。

時効援用を専門とした事務所もありますので、不安な方はこのような専門家に相談することをおすすめします。