2019.07.05更新

養育費の時効は成立する?3パターンの時効期間と援用時の注意点

養育費の時効については、条件や状況によって期間が異なります。
従って、時効が成立するか否かを確認したいときには個別に状況を照らし合わせながら考えなければなりません。時効期間を判断するうえでポイントとなるのは、離婚の際(あるいは離婚後)の協議内容です。

今回は、急に元の配偶者から養育費を請求されどうしても支払いが困難な方に対して、時効援用という一つの対処法を紹介します。

ご自身の状況と照らし合わせながら、養育費の時効援用ができるか否か考えてみてください。

養育費養育費請求権)について時効は成立する?しない?

離婚した夫婦間での養育費(正確には養育費請求権=養育費を請求する権利)について、時効は成立するのでしょうか?

例えば、離婚をした元妻から「過去7年間分の養育費をまとめて支払ってほしい」と突然請求されてしまった場合、全額応じるしかないのでしょうか?

もし時効が認められた場合、その期間の養育費については法律上支払わなくても良いことになります。
一方で、時効が認められない場合には、元妻から裁判訴訟を起こされてしまったり、財産や給与を差し押さえられたりしてしまう可能性があります。

養育費の時効に関しては、離婚時の取り決めによって時効の期間が3パターンあります。

離婚時に取り決めを行っていない場合、時効は成立しない

離婚時に養育費について取り決めを行っていない場合、「取り決めをしていないのだからそもそも養育費は払わなくてもよいのでは?」と思われるかもしれませんが、民法には以下の規定があります。

第八百七十七条

直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある。

離婚したとはいえ、ご自身の子どもは直系血族にあたるため扶養義務がある=養育費を支払わなければならないということです。この場合の扶養義務(=養育費を支払う期間)は、子どもが20歳になるまでということになります。

問題となるのは、元配偶者が請求した時点以降の養育費を支払えば済むのか、それとも離婚した時点に遡って養育費を支払わなければならないのかということです。

この問題は裁判で何度も争われていますが、元配偶者が養育費を請求した時点から支払い義務が発生するという結論になることが多いです。具体的には、養育費の調停申し立てがなされるなどの具体的な請求があった時点からということです。

つまり、離婚の時に養育費の取り決めを行っていない場合は、元配偶者より養育費を請求された時点から子どもが成人するまでの間に関して支払い義務があるということになります。
そして、この期間の養育費が支払われなかった場合は、何年経っても時効が成立しないため、例えば子どもが成人してから10年経った後でも時効援用することができません。

夫婦間協議で養育費の取り決めを行った場合の時効は5年

夫婦間協議、つまり話し合いによって「子どもが〇〇歳になるまで毎月5万円を養育費として支払う」といった取り決めを行った場合の時効期間は5年間です。

協議の内容は離婚協議書もしくは公正証書に記載されるケースが一般的です。
ここでの離婚協議書とは、配偶者間のみで離婚に関する話し合いの内容をまとめたものです。
公正証書とは、将来トラブルが起きないように公証人(公証役場に勤める法律実務専門の公務員)が養育費や慰謝料の内容を整理して記載したものです。

つまり、養育費の取り決めを行ったものの支払いが滞ってしまっている場合は、過去5年間分について支払い義務があり、5年より前の分については時効援用が可能ということになります。
この場合、元配偶者に対して時効援用通知書を送付して初めて時効が成立します。

この内容は、民法169条(定期給付債権)に規定されています。

第169条

年又はこれより短い期間によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。

家庭裁判所の審判や調停により養育費の取り決めを行った場合の時効は10年

離婚の際、あるいは離婚後に家庭裁判所の審判や調停により養育費の取り決めを行っている場合の時効は10年間です。

民法174条に以下のように規定されています。

第174条の2

確定判決によって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。

養育費の取り決めの内容によってどんな時効が適用されるかについても変化するんですね。

そうなんです。だから、時効援用をする際には調停の内容を明確にして、どの時効が適用されるかを把握することが重要です。

取り決めによってもお手続きが変わりますので、不安な方は専門家に相談してみてください。

取り決めを行い、5年もしくは10年経過している場合は時効を主張できる可能性があります。条件を満たしている方はお早目にお手続きください。

養育費の時効援用に関するその他の注意点

養育費の時効援用をする際に注意すべきポイントについて解説します。

ポイント1
時効の起算日につて

「毎月〇日に〇〇円支払う」という取り決めになっている場合、毎月の支払日が時効の起算日になります。

夫婦間協議で養育費の取り決めをした場合、時効期間は5年ですので、5年より前の養育費については時効が成立しているということになります。

ポイント2
時効の中断について

債務の承認や元配偶者からの差し押さえ、裁判上の請求があった場合には、時効が中断します。
つまり、時効期間が1からのリセットになります。時効の中断については、こちらで詳しく解説しています。離婚から5年あるいは10年経過しているからといって必ず時効が成立するわけではありません

ポイント3
時効援用通知をしなければ、時効期間経過後も請求される

時効は援用通知を送付して初めて効力を発揮します。
従って、時効期間が成立しても援用通知書を作成し、送付していなければ時効は成立しません
手続きの方法についてこちらで詳しく掲載していますし、手続きが不安な方や時間が取れないという方は弁護士事務所や行政書士事務所の時効援用サポートを利用する方法もおすすめです。

ポイント4
迅速かつ適切な対応をしなければ社会的信用を失うことも

急に養育費を請求されても、現実的に支払いが困難な場合はどうしてよいかわからず、なかなか身動きが取れないこともあると思います。

しかし、相手方の請求を無視したり先延ばしにしたりしていると、財産や給与を差し押さえられてしまい勤め先や知人からの信用を失ってしまう可能性があります。

時効援用をしたうえで、相手方との協議をするなど、現実的な解決に向けての話し合いをスタートすると良いでしょう。

確かに、無視されてしまったと感じたら給与を差し押さえるしかないって思うかも・・・

そうならないための解決策として、時効援用で法的に支払わなければならない部分を明確にしてから、支払い方法などについて改めて協議してみると良いのではないでしょうか。

まとめ

養育費に関しても、離婚時の協議内容に基づいて時効援用が利用できるケースはあります。

その場合の時効期間は、夫婦間協議に基づく場合は5年、裁判所の審判や調停に基づく場合は10年です。条件によって時効の期間が異なるので、離婚時にどういった協議をしたのかをはっきり把握しておくことが重要です。

また養育費についても、債務の承認や裁判上の請求などにより時効が中断することがあります。
時効が中断してしまうと、相手が元配偶者とはいえ時効期間がリセットされ、余計に時効援用が難しくなることもありますので慎重に対応しましょう。